診断士の資格は取った。でも、この資格の市場って、実際どうなっているんだろう
本業はある。すぐ独立するつもりはない。
ただ、せっかくの資格を副業や強みに変えたい!
企業に勤めながら中小企業診断士の資格を持つ方が立ち止まりやすいのは、まさにこの地点です。実際のところ、中小企業診断士の資格取得において、試験申込者の6割超は民間企業勤務。
「勤めながら診断士」は、いまや多数派です。
正直に言うと、当社が中小企業のマーケティング支援の現場で見ている限り、経営者が相談相手を「診断士だから」という理由で選ぶ場面は、残念ながらほとんど遭遇しません。
選ばれているのは資格ではなく、「うちの、この課題を、ここまでやってくれる人」です。
この記事の結論
- 診断士の登録者は約3万人。試験には毎年2万人超が申し込み、供給は増え続けている。
- 受け皿の経営コンサルティング市場は2023年度に4兆円を突破。ただし成長は鈍化し、倒産・廃業は過去最多を更新中。専門性のない支援者から淘汰が進んでいる。
- 需要側の中小企業の課題は「人手不足」「価格転嫁」「AI・DX」「事業承継」の4つに集中している。
- 無料の公的相談はすでに年間70万件超。民間の診断士は「相談相手」ではなく「実行まで進める伴走者」に寄る必要がある。
- 生き残りの軸は「課題をしぼる × 相手をしぼる × 実行まで伴走する」の掛け算。
毎年数千人ずつ増え、企業内が多数派
中小企業診断士の登録者数は約3万人です(2019年4月時点で約2.7万人と経済産業省が発表しており、その後も新規登録が続いています)。公式の登録者数は、活動を休止している診断士も含んだ数字ですが、新規参入も途切れません。

令和7年度の第1次試験は申込者26,211人・合格者4,344人(合格率23.7%)、第2次試験は申込者7,355人・合格者1,240人でした。

注目すべきは受験者の中身です。

1次試験申込者の64.1%、2次試験申込者の66.3%が民間企業勤務!
日本中小企業診断士協会連合会の活動状況アンケート(2021年5月)でも、独立診断士48.3%に対し企業内診断士46.4%と、ほぼ半々です。

”勝ち筋”は見えていますか?
Question 1/5
Q1.
競合と自社の「差分」や「立ち位置」を、
毎月定量的に把握できていますか?
市場動向②受け皿:コンサル市場は4兆円突破、しかし淘汰が過去最多!
診断士の活動の受け皿となる経営コンサルティング市場は、帝国データバンクの調査によれば、2021年度以降に前年度比1割前後の成長を続け、2023年度に初めて4兆円を突破しました。市場そのものは大きく育っていることになります。
一方で、2024年度の伸び率は3%以下に鈍化し、市場は「踊り場」に入ったと見ることもできます。そして同時に、経営コンサル業者の倒産は2024年159件、2025年167件と過去最多を更新し続け、2026年は1〜5月だけで倒産74件・休廃業168件と、年間最多を更新するペースとなっています。
この現象を、当社では「診断士資格の価値の低下」ではなく、「資格名だけで勝負する働き方の終わり」と読むのが正確だと考えています。
一般論の助言はAIが代替し始めたからこそ、現場に入って実行を進める仕事の価値はむしろ上がっています。ここが、この記事のタイトルにある「資格だけでは選ばれない時代」の意味です。
市場動向③需要:中小企業の課題は4つに集中している
需要側の中小企業は全国に約336万社。課題は公的データではっきり4つに集中しています。診断士が狙うべきテーマは、ここから選ぶことになります。
- 人手不足 × 業務改善:
- 2025年版中小企業白書が示すとおり、構造的な人手不足のなかで業務効率化は全業種共通の宿題。「いまの人数で回る現場にする」提案は、ほぼどの会社にも刺さる
- 価格転嫁 × 収益改善:
- 中小企業庁の調査(2026年3月時点・約7万社回答)で、価格交渉の実施率は90.7%に対し転嫁率は54.2%。特に労務費の転嫁は50.0%と遅れており、原価整理や交渉資料づくりの支援がそのまま効く
- AI・DX × 現場定着:
- 中小機構の調査(2026年3月公表・全国1万社対象)で、中小企業のAI導入率は20.4%。導入済み企業の82.6%が生成AIを使う一方、「定着しない」「社内ルールがない」という次の悩みが生まれている。社内調整の難しさを知る企業内診断士がもっとも優位に立てる領域
- 事業承継 × 金融・計画整理:
- 経営者の高齢化にともなう構造的テーマ。資金、組織、取引先、後継者育成まで絡むため、金融機関出身者や事業計画づくりの経験者に向く
もうひとつ、需要側で無視できないのが無料相談の存在です!
国が全国に置く「よろず支援拠点」は、令和6年度の実績で年間70万件を超える相談に対応しています。経営者からすれば、「話を聞いてアドバイスをくれる人」は無料で手に入るので、「無料で対応します」は差別化になりません。
有料で選ばれるには、その先の役割を担う必要があります。
なお、AI・DXの文脈でひとつ付け加えると、支援者である診断士自身の発信も、これからは検索エンジンだけでなくAIの回答にどう拾われるかが肝となります。
この観点はSEOとLLMOの違いを解説した記事とAIO対策の記事で詳しく書いています。
経営者は誰と比べているのか?競合5類型と勝ち筋
市場動向を踏まえて差別化を考えるとき、注意したいのは経営者の比較対象が「診断士同士」ではないことです。
実際の競合と、それぞれに対する勝ち筋を整理すると分かりやすくなります。
| 競合の類型 | 強み | 弱み | 企業内診断士の勝ち筋 |
|---|---|---|---|
| よろず支援拠点・公的窓口 | 無料で相談しやすい | 継続的な伴走や現場での実行支援は限定的になりやすい | 会議への同席、進捗管理など「実行と定着」で差をつける |
| 税理士・会計士 | 顧問関係があり数字に強い | 業務改善やDXの実装まで広げないことがある | 財務と現場の橋渡し役になる |
| 補助金支援の事業者 | 制度に強く案件化しやすい | 採択後の運用改善まで弱いことがある | 採択後の実装・投資回収まで支援する |
| ITベンダー・DX会社 | 導入スピードとツール知識 | 経営課題の整理が弱いことがある | 上流の課題定義と優先順位づけを担う |
| 独立コンサルタント | 提案力が高く支援範囲が広い | 社内事情や現場の調整に弱いことがある | 「社内で動かした経験」を前面に出す |
共通しているのは、差別化の軸が「相談の入口」ではなく「社内で進むところまで伴走できるか」にある、という点です。
実例に学ぶ:専門テーマはどう「仕事」になるのか
差別化の実例として参考になるのが、株式会社AimX代表の小澤啓佑氏です。

小澤氏は中小企業診断士で、金融機関とAIベンチャーでの実務経験を経て、現在はAI活用・セキュリティ対策支援、資金調達支援、マーケティングなどを横断して提供しています。
重要なのは、単に「AIに詳しい」のではなく、経営支援のテーマにAIやセキュリティを接続している点です。
金融機関向けの「AI時代に銀行員が身につけるべきITリテラシー」や「中小企業で進む生成AI活用と、銀行員の価値提案」などセミナー登壇や、自治体の事業者向け講座での登壇など、「誰の、どの課題に効くか」が分かる形で発信されています。
話題になったのは、栃木銀行において新人研修の一環で、初のAIリテラシー研修を開催したことです。

ここから学べるのは、中小企業診断士の資格を前に出すのではなく、自分の本業経験を経営課題に効く専門テーマへ翻訳する、という順番です。
小澤氏を例にすると、中小企業診断士×AI研修によって知名度やビジネスの幅を広げている点は、中小企業診断士単体で攻めようとしている人とは大きな差別化になっています。
- 金融出身なら資金繰りや事業性
- 評価メーカー勤務なら原価や現場改善
- IT部門なら業務設計や導入支援
このように、すでに持っている実務知を軸にしたほうが、強いポジションをつくれます。
中小企業診断士としてのポジショニングをどう捉えるか
小澤さん金融機関で財務分析・融資審査に従事し、中小企業の投資計画を「お金を貸す側」の視点から数多く評価。その後、NTTドコモグループのAIベンチャーに参画し、今度は「導入する側」として、企業へのAIシステム導入から活用・定着までを推進してきました。
現在、小澤さんは株式会社AimX代表取締役、大分大学客員研究員として、中小企業を中心にAI活用、AI研修、サイバーセキュリティ対策などに取り組まれています。
経営・財務とAI・セキュリティの双方を理解する強みを活かし、「技術的に実現できるか」だけではなく、「その投資は経営にとって本当に必要か」「どこまで取り組むべきか」という経営視点から、AI活用やセキュリティ対策、必要な資金調達まで一貫して支援しています。
テーマを絞ったことで、仕事の依頼は劇的には変わらないが時間経過とともに明らかに変化!
- 小澤さん自身、最初の仕事はどの入口から来ましたか?
-
「中小企業診断士は何ができるのかわからない」という声をよくいただきます。中小企業診断士は対応できる範囲が広い分、かえって強みが伝わりにくいのだと思います。
私の場合、AI活用・AI研修、セキュリティ対策、資金調達支援に事業を絞ったことで、「何ができる人か」が伝わるようになりました。自分の実務経験や専門性をそのまま活かした営業活動ができるようになり、結果として、取引先や金融機関からのご紹介、ウェブサイト経由のお問い合わせにつながっています。
最初の仕事は、知人や以前からお付き合いのあった社長さんからいただきました。そこから取引先や金融機関からのご紹介が増え、最近ではセミナーにご参加いただいた方や、過去の実績をご覧になった方から、ウェブサイト経由でお問い合わせをいただくケースもあります。
- 企業に勤めながら動く人へのアドバイスがあればぜひ教えてください!
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企業に勤めながら動く方へのアドバイスとしては、まず身近な人に「自分は何ができるのか」を伝えておくことをおすすめします。私自身、最初の仕事は人とのつながりから生まれましたし、それまでに築いてきた信頼関係が、独立後の最初の営業資産になったと感じています。
企業に勤めたまま副業で始めるには?仕事の入口6つ
戦略の方向が見えたら、次は実践です。
企業内診断士が本業と両立しながら始めやすい仕事の入口は、主に次の6つです。
- 公的機関の専門家派遣・窓口相談:
- 商工会議所、自治体、中小企業支援団体などに専門家登録し、派遣や相談対応を受ける。実務経験と実績づくりの定番ルート
- セミナー講師・企業研修:
- 金融機関、支援機関、業界団体向けの登壇。専門テーマが明確な人ほど声がかかりやすい
- 執筆・監修:
- 受験生向け教材、業界メディア、書籍など。平日夜・休日で完結しやすい
- スポットコンサル:
- マッチングサービス経由で1時間単位の相談に応じる。本業の業界知識がそのまま値段になる
- 補助金・助成金の申請支援:
- 事業計画づくりの力を活かしやすく、単価も比較的高い。ただし前述のとおり、採択後の実装・運用まで見据えると差別化になる
- 顧問・伴走支援:
- 月次で企業に入り、会議同席や進捗管理まで担う。もっとも価値が立つ、副業の最終形
いずれの場合も、勤務先の副業規定の確認が前提です。また、診断士は資格更新に実務従事のポイントが必要なので、副業はその面でも合理的な選択です。
結局、何から始めればいいのか?最初の4ステップ
- 本業経験とつながるテーマを選ぶ:
- 人手不足、価格転嫁、AI・DX、事業承継。この中から、いまの仕事と最も結びつくものを優先する
- 「相談メニュー」ではなく「変化メニュー」にする:
- 「DX相談承ります」ではなく、「業務の棚卸し → AI活用候補の整理 → 社内ルールの整備」のように、相手に起きる変化まで書く
- 無料相談の市場と戦わず、伴走の領域へ寄せる:
- 相談だけなら公的窓口で足ります。会議同席、進捗管理、運用の定着など、実行部分に寄せるほど価値が立つ
- 前章の入口(専門家派遣・講師・執筆・スポット相談など)で小さく実績を積む:
- いきなり独立するより、小さく始めて実績を言語化し、強みを磨くほうが現実的です
そして、テーマをしぼったら、次は「誰に、どう見つけてもらうか」の設計です。これは、中小企業診断士でも、会社のマーケティングとまったく同じ構造です。
この市場分析なしに発信や営業を始めても、労力が溶けるだけです。当社が中小企業支援で必ず市場分析から入るのは、この順番を逆にすると成果が出ないことを現場で何度も見てきたためです。
データまとめ:診断士を取り巻く市場動向の早見表
本記事で扱った数字を一覧にまとめます。
引用・転載の際は、出典として本記事URLを明記いただければご自由にお使いください。
| 指標 | 数値 | 時点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 診断士登録者数 | 約3万人(休止中の登録者を含む) | 2019年4月時点 約2.7万人+その後の純増 | 経済産業省発表 |
| 1次試験申込者数/合格者数 | 26,211人/4,344人(民間企業勤務64.1%) | 令和7年度 | 日本中小企業診断士協会連合会 |
| 2次試験申込者数/合格者数 | 7,355人/1,240人(民間企業勤務66.3%) | 令和7年度 | 日本中小企業診断士協会連合会 |
| 経営コンサルティング市場規模 | 4兆円超(2023年度に初突破、以後は成長鈍化) | 2023〜2024年度 | 帝国データバンク |
| 経営コンサル業の倒産件数 | 2024年159件→2025年167件と過去最多を更新 | 2024〜2025年 | 帝国データバンク |
| 中小企業のAI導入率 | 20.4%(導入済み企業の生成AI利用率82.6%) | 2026年3月公表 | 中小企業基盤整備機構 |
| 価格転嫁率 | 54.2%(労務費50.0%、エネルギー48.9%) | 2026年3月時点 | 中小企業庁 |
| よろず支援拠点の相談対応 | 年間70万件超 | 令和6年度 | 中小企業基盤整備機構 |
まとめ:市場は拡大、ただし選ばれ方が変わった
中小企業診断士を取り巻く市場は、需要も受け皿も拡大しています。一方で、生成AIの普及を背景に、専門性で差別化できない支援者の淘汰が同時に進んでいます。
つまり、市場機会は資格そのものにあるのではなく、複雑化する経営課題を「現場に落ちる形」で支援できる人が足りていないことにあります。
企業内診断士には「社内で物事を動かした経験」という固有の武器があります。それを市場の課題に翻訳できたとき、資格ははじめて仕事になります。これから動くなら、最初に考えるべきは「何ができるか」ではなく、「どの市場課題に、自分の経験が一番効くか」です。
なお、当社ワクドリは「社外マーケティング室」として、市場分析から戦略設計、SEO・AI検索(LLMO/AIO)対策、サイト制作までを一気通貫で支援しています。
この記事でお伝えした「市場から逆算してポジションを決める」進め方を、自社・自分の商圏で実践したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
よくある質問
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